動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

子宮蓄膿症

キーワード:避妊していない、元気食欲がない、水をたくさん飲む、陰部を気にする

 

【子宮蓄膿症とは?】

 子宮内部の子宮粘膜に細菌感染(大腸菌、サルモネラ菌など膣の常在菌による)が起こることが原因となります。通常は子宮内へ細菌が侵入しても、正常な粘膜の免疫により感染は簡単には起こりません。しかし、発情後期などでエストラジオールやプロゲステロンなど女性ホルモンの影響を受けて子宮粘膜が増殖して厚くなると感染が起こりやすくなります。このため、発情終了後~3ヶ月で起こりやすく、若齢犬でも罹患することがありますが、中高齢犬では比較的頻繁に見られる疾患です。 

 

【症状】

 子宮蓄膿症の症状は、はじめのうちは無症状ですが、子宮内に膿が溜まり病態が悪化するにしたがって、多飲多尿や、陰部より膿や血膿の排出がみられ気にして舐める行動、発熱、吐き気に伴う元気と食欲の減退などの諸症状が現れてきます。子宮内に溜まった多量の膿によって腹部が膨らんで見える場合もあります。

 子宮内で増殖した細菌が毒素を出し、血栓ができたり腎障害を引き起こすことで重篤な状態に陥り、最悪の場合死に至る可能性もあります。また、陰部からの膿はみられないこともあり、その場合気付くのが遅れ、重症化してしまうケースもあります。


【診断】

 診断は、血液生化学検査による全身状態の把握や、レントゲンや超音波診断装置による画像診断により子宮の状態を確認することでおこなうことができます。


 ・レントゲン写真




・超音波画像





【治療】

 子宮蓄膿症の治療は、手術で卵巣と子宮を切除する根治的外科療法と、抗生物質と点滴を適用するような支持内科療法があります。 

 しかし、内科治療を行った場合、完全に膿を排出させることができずに再発することがありますので、発情期が終わったら注意しなければいけません。したがって、最善の治療は外科手術と言うことができます。 

 子宮蓄膿症の予防は、避妊手術を受けていれば可能です。

 子宮蓄膿症での手術・治療となると費用もかかってきますので、出産の予定がなく健康状態が良いのであれば手術を済ませておくとよいでしょう。 

 子宮蓄膿症は犬で多くみられますが、猫でもまれに見られる病気です。特に猫では発情出血が認められないので、子宮蓄膿症が疑わしい場合には早期に受診していただく事をおすすめします。

 

2021.09.05