動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

漏斗胸

漏斗胸(ろときょう)とは、胸骨と肋骨が変形し、胸部が陥没する(凹んでいる)先天性の病気です。

凹みの状態は動物それぞれによって異なります。

飼い主様が指で触ってもはっきりと分かる程に深く凹んでいる動物もいますし、凹みが軽い状態ですんでいる動物もいます。

胸が凹んでいるとその中の臓器、つまり肺や心臓が影響を受けます。

肺を入れる容積が少なくなるため、肺活量は少なくなります。

肺に空気を送るための気管や気管支も狭くなり、空気の通りが悪くなります。

重度になると呼吸困難などの症状が出たり、心機能にも影響が出てしまう場合もあります。

 

呼吸困難以外の症状としては、嘔吐、食欲不振、体重減少、咳、舌の色が青紫色になる、運動不耐性、などが認められる場合があります。

 

漏斗胸の発生には遺伝的素因があることが示唆されています。

 

犬よりも猫で多く認められます。

 

呼吸困難などの重篤な症状がみられる場合は、外科手術により陥没した骨の整復を行い、胸腔を広げる治療を行うことがあります。

 

<漏斗胸に罹患した仔猫 整復手術前>

 

<漏斗胸に罹患した仔猫 整復手術後>

 

 

整復手術としては、金属製の骨プレートで固定する外副子設置術を行います。

 

一般的に若齢の動物における整復手術は、肋軟骨や胸骨がまだ柔軟であり胸郭の整復が比較的容易です。

 

当院にて実施している整復手術の内容としては、

・上腹部アプローチにて横隔膜を切開します。

・陥没部を用手にて挙上し、両側肋軟骨を水平マットレス縫合で緊縛し、陥没を矯正固定します。

・さらに挙上矯正した肋軟骨部直上に、胸郭に沿い湾曲させた骨プレートを装着し、陥没部への牽引矯正力を増加維持させます。

 

レントゲンに写っている漏斗胸に罹患した仔猫は、呼吸困難が認められ、運動不耐性、体重も他の兄弟猫と比較して軽かったのですが、整復手術後は呼吸状態が改善され、運動時の易疲労性が消失し、急速に体重の増加もみられ、他の兄弟猫と同様な体重まで回復しました。

 

2017.03.21