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今回は椎間板ヘルニアが一般的にどのような経過で治るのか、なぜ上記の治療法を行っているのか見ていきましょう。
以前の記事通り、椎間板ヘルニアは1950年ごろにHansenという方が病態をもとに2種類に分類しました。いわゆる1型と2型です。治療において明確な差はほとんどありませんが、椎間板の変化に違いがあります。
1型は好発犬種があり、軟骨異栄養犬種として短肢の犬種、アメリカンコッカ―スパニエル、ビーグルがあげられます。1型の病態として、椎間板の中心部にある髄核とよばれる軟骨が石灰化し、過度の脊髄にかかる圧力が原因で脊髄側に飛び出ます。
一方、2型は非軟骨栄養犬種でも起こります。病態として、髄核内がコラーゲンに置換することで髄核が流動的になり椎間板全体が動きやすくなり、脊髄炎をおこします。進行すると椎間板の中でも外側の線維輪が線維化をおこして硬くなります。
またどちらかを判別できないこともあります。症状はどちらにも大きな差はありません。
最も使用される治療薬は主にステロイド薬です。ステロイド剤は血管透過性の低下によって炎症細胞を減少させ、組織にたまる液体を間接的になくす効果があります。一方、ステロイド剤の副作用に筋肉量の低下、体重増加があることは留意する必要があります。
外科を用いない治療のみで、およそ50%が長期間の再発なく回復するといわれます。
外科を用いた場合、重度の神経障害をもつ患者をふくめ、90%近くが回復できるともいわれています。最も良いのは排泄困難、四肢の完全麻痺のような重症になる前に外科を3日以内に行い、神経障害を最小限にすることです。いずれも完治には2か月を要するとされており、根気強く治療を続けることが大切です。繰り返すほどに治療の反応は悪くなるため、早めに受診していただけると幸いです。
ただし複数回の麻酔に対する生命の危険性、ヘルニア箇所が複数であることや肥満など様々な原因で手術が難しいこと等によって麻酔時間には個体差があります。
椎間板の影響で脊髄には何が起こっているのか。それは炎症です。これが動物の痛みや神経麻痺の原因になります。より細かい機序は以下の通りです。
突発的な神経傷害の後、1週間以内に局所の血管収縮と炎症細胞浸潤がおきる。次に組織液、活性型アストロサイトによって最終的に神経細胞などの破壊が進み、壊死組織に置き換わっていく。この反応が二次障害として悪化をもたらす。
治療の目指すところはこの神経細胞の破壊プロセスを止めることです。現在、人医療でも、認知症やダウン症といった神経疾患に適用する目的で活性型アストロサイト遺伝子を抑制するNrF2因子の研究をもとに新薬の開発が期待されています。
突発的な神経障害を予防するには体重管理、段差や滑りの少ない生活環境、コルセットなどを意識してください。野生動物では地面で滑ることは非常に限られていましたが、室内飼育が増えた影響で椎間板ヘルニアは非常に身近な病気です。今後はより足腰を大切にしながら生活していただけると幸いです。
参考文献:J Vet Intern Med 2013;27:1318-1333