動物たちの病気 症例集診療内容の一部紹介

動物たちの病気 症例集

大動脈血栓塞栓症

猫における大動脈血栓塞栓症

大動脈血栓塞栓症とは、大動脈という太い血管に血の塊である血栓が詰まってしまう疾患で、急性の痛みと四肢の不全麻痺といった症状を示す。

原因:
猫ではほとんどが心原性(>78%)である。他の原因としては、甲状腺機能亢進症(10%)、腫瘍(5%)が挙げられる。

症状:
The 5 Ps

 1,Pain(痛み)

 2,Paralysis(不全麻痺)

 3,Pulselessness(脈拍欠損)

 4,Poikilothermy(冷感)

 5,Pallor(蒼白)

 

診断:

・症状(5Ps)

・血液検査

①麻痺している足と正常な足から採血→血糖値の測定(患肢の血糖値が低下)

②CPKの上昇(筋虚血に伴う筋障害により上昇)

 ・画像診断

超音波検査にて血栓の描出(心臓内、塞栓部)

 

併発する可能性のある病態:

・肺水腫:呼吸が苦しくなる

 ・高K血症:不整脈を引き起こす

 ・急性腎障害


治療:

・疼痛管理

オピオイド系の強い鎮痛剤を数日間使用します

・合併症の治療

心不全、腎不全などに対する治療を行います

・抗血栓薬

クロピドグレル、リバーロキサバン、低分子ヘパリンといった薬剤を使用します 

・血栓溶解療法

再灌流障害を引き起こす可能性があり、有効性は分かっていない。

・血栓摘出術

血栓溶解療法と同様、再灌流障害を引き起こす可能性がある。

血栓溶解療法と血栓摘出術は、血栓症発症後すぐに実施できると、再灌流障害のリスクが軽減でき有効性が高まると考えられる。


予後:

生存率(退院率)は30~40%程度と予後はかなり厳しい疾患となります。

その後の生存期間の平均値も1.3年という厳しい数値となる。

 



犬における大動脈血栓塞栓症


原因:

犬の場合は、心疾患、蛋白漏出性腎症、腫瘍など様々な原因で生じる。

原因が特定できないケースも存在。

急性と慢性のケースが存在し、慢性の場合、症状が軽度なこともある。

 

診断方法と治療は猫と同様である。


予後:

生存率(退院率)は57%と猫と比較すると良いが、決して予後の良い疾患とは言えない。

2025.04.30